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CATEGORY: #試験・計測
投稿日:2026.07.03
衝撃試験は、製品が落下や砲撃などの瞬間的な外力に耐えられるかを評価する重要な信頼性試験です。(一部に繰り返し衝撃による疲労を捉える例外「バンプ試験」も存在します。)
しかし振動試験との違いや、MIL-STD-810など適用規格の選び方に迷う方も少なくありません。
本記事では衝撃試験の主要4種類と規格選定、外注時の確認ポイントまで実務目線で整理します。
衝撃試験と振動試験を分ける本質的な違いと衝撃試験の必要性
衝撃試験と振動試験は、どちらも加振系の試験ですが、再現する物理現象と評価対象が根本的に異なります。
短時間・高加速度の外力に対する瞬間破壊を見るのが衝撃試験、長時間の繰り返し負荷による共振疲労を見るのが振動試験です。
本章では両者を分ける2つの本質的な違いと、衝撃試験が不可欠となる3つの具体的な場面を整理します。
主なポイントは以下のとおりです。
一つずつ解説していきます。
衝撃試験と振動試験を分ける最大の指標は、外力の持続時間と加速度レベルです。
衝撃試験は数ミリ秒から数十ミリ秒の短時間に数十G〜数千Gの加速度が作用する現象を、振動試験は数分から数十時間にわたって数G程度の加速度を継続的に与えて長期使用時の劣化を評価します。
落下衝撃のパルス幅6ms・数百Gに対し、輸送振動は実効値2〜5Gを数十時間印加するのが一般的です。時間軸と加速度が2〜3桁異なるため、試験設備・治具設計・判定基準のすべてが別物となります。
衝撃試験は瞬間的な過大応力による瞬間破壊(はんだクラックや筐体割れなど)を評価します。
振動試験は共振点付近で繰り返し応力が累積する共振疲労(取付ボルトのゆるみや疲労亀裂など)を評価する試験です。
FEMでも、衝撃試験は過渡応答解析で最大応力点を、振動試験は周波数応答解析やランダム応答解析で疲労損傷度を算出するのが一般的で、故障モードを正しく特定するには両試験の補完的な組み合わせが重要となります。
航空機搭載品が衝撃試験を必要とする代表的な場面は、離陸・着陸・射出(または分離・投下)の3つです。
これらは飛行中の振動環境とは性質が異なり、数十G〜数百Gの加速度が瞬間的に作用する過渡現象のため振動試験では評価できません。
離陸時はカタパルト射出やジェットブラストによる急加速、着陸時はハードランディングによる衝撃、射出時はパイロシステムやペイロード分離による衝撃が発生します。
慣性航法装置(INS)や通信機器は着陸衝撃後も即座に正常動作する必要があり、MIL-STD-810 Method 516の機能衝撃試験で検証されます。

製品レベルの衝撃試験は、再現する衝撃環境とパルス波形の違いによって主要4種類に分類されます。
ここでは各試験の目的・パルス特性・代表的な適用シーンを整理し、実務での使い分け判断に役立つ視点を提示します。
本章の主なポイントは以下のとおりです。
落下衝撃試験は、製品が輸送・取り扱い時に受ける落下衝撃に対する耐性を評価する試験です。
梱包状態または製品単体を所定の高さから落下させ、機能維持と構造的健全性を確認します。
パルス幅は数ミリ秒、加速度は数百Gに達するのが一般的で、JIS C 60068-2-31やMIL-STD-810 Method 516.8 Procedure IV(Transit Drop)に基づく試験が広く採用されています。
10kg以下の電装品なら75〜100cmの落下高さが目安で、角・稜・面の各落下姿勢で実施することで多様な衝撃パターンを網羅的に評価できる点が特徴です。
バンプ試験は、製品が繰り返し受ける小〜中規模の衝撃による疲労耐性を評価する試験です。
衝撃試験の枠組みでありながら、疲労を捉える特殊な試験となります。
数千回にわたって規定のパルスを連続印加することで、車載機器・輸送機器・軍用装備品が長期使用で受ける累積ダメージを再現します。
従来IEC 60068-2-29として規定され、現在はIEC 60068-2-27に統合されたバンプ試験規定に準拠した試験が広く採用されており、加速度40G・パルス幅6ms・印加回数1,000〜4,000回といった条件が代表的です。
試験対象は車両・鉄道用機器・軍用通信機器など、走行衝撃を継続的に受ける製品が中心で、単発の衝撃試験では検出できない疲労破壊を捉える評価工程として位置づけられます。
爆発衝撃試験は、パイロ装置の作動・ミサイル発射・砲撃といった極限的な衝撃環境を再現する試験です。
加速度は数千G〜数万G、パルス幅は1ミリ秒以下という非常に短時間の高周波衝撃を扱う点で、落下衝撃試験とは性質が大きく異なります。
火工品を用いた実爆方式と機械式の代替試験装置を用いる方式があり、MIL-STD-810 Method 517(Pyroshock)に基づきSRS(衝撃応答スペクトル)で評価条件が規定されます。
航空機の射出座席、ミサイルの段間分離機構、衛星のフェアリング分離などが主な対象です。
機械衝撃試験は、規格で標準化されたパルス波形を用いて製品の衝撃耐性を評価する試験です。
再現性の高い人工的な衝撃パルスを衝撃試験機で印加することで、製品間・試験機関間の評価結果を比較可能にする点が特徴となります。
IEC 60068-2-27が代表規格で、正弦半波(加速度50G・パルス幅11msなど)が標準条件として規定されています。
代表的なパルス波形と特性は以下の通りです。
| パルス波形 | 主な特徴 | 代表的な適用シーン |
| 正弦半波 | 立ち上がり・立ち下がりが滑らか | 民生機器・電装品の一般評価 |
| のこぎり波 | 立ち下がりが急峻 | 輸送機器・宇宙搭載品 |
| 台形波 | 加速度が一定時間維持される | 射出・急加減速環境 |

航空機搭載電装品の分野では、米軍規格のMIL-STD-810とIEC(国際電気標準会議)規格のIEC 60068-2-27が代表的な参照規格として位置づけられています。
両規格は試験条件の規定方法やプロシージャ構成が異なるため、製品の用途・納入先・適用要求に応じた使い分けが必要です。
本章では2規格の要点と選定指針を整理します。
主なポイントは以下のとおりです。
MIL-STD-810は米国国防総省が制定する装備品の環境試験規格で、衝撃試験はMethod 516で規定されています。
最新版のMIL-STD-810H Method 516.8では、想定される衝撃環境に応じて複数のプロシージャが用意されており、目的別に試験条件を選定する構成です。
全8プロシージャで構成されますが、ここでは航空機搭載電装品で参照頻度の高い主要プロシージャを抜粋します。
| プロシージャ | 試験内容 | 主な適用対象 |
| Procedure I | 機能衝撃試験 | 動作中の機能維持確認 |
| Procedure II | 輸送衝撃 | のこぎり波で輸送時衝撃を再現 |
| Procedure IV | 輸送落下試験 | 取り扱い・落下衝撃 |
| Procedure V | クラッシュハザード衝撃 | 墜落・衝突時の安全性 |
| Procedure VIII | 射出・着艦衝撃 | 艦載機・射出座席 |
SRS(衝撃応答スペクトル)による評価条件指定が標準的なアプローチで、納入先からMethod 516準拠が要求される場合は、どのプロシージャを適用するかを設計初期段階で確定することが重要となります。
IEC 60068-2-27は電気・電子機器の衝撃試験に関する国際規格で、再現性の高い標準衝撃パルスを規定している点が特徴です。
MIL-STD-810が運用環境ごとのプロシージャを規定するのに対し、IEC 60068-2-27はパルス波形・加速度・パルス幅の組み合わせを標準化することで評価結果の比較を可能にしています。
規定されているパルス波形は正弦半波・のこぎり波・台形波の3種類で、代表的な試験条件は加速度50G・パルス幅11ms(正弦半波)、150G・6ms、500G・1msなどです。
印加方向は通常6方向で、CE認証取得を要する欧州向け製品では事実上必須の参照規格となっています。
航空機搭載電装品で参照する衝撃試験規格は、納入先・搭載機種・適用要求の3軸で選定します。
米軍機・防衛装備品向けではMIL-STD-810、民間航空機向けではRTCA DO-160、欧州向け民生機器ではIEC 60068-2-27が標準的な参照規格です。
まず納入先の要求仕様書(SOW・SRD等)を確認し、指定規格を特定します。
指定がない場合は搭載機種の用途を起点に、軍用機・無人機・ミサイル等であればMIL-STD-810 Method 516、民間航空機の搭載電装品であればRTCA DO-160 Section 7「Operational Shocks and Crash Safety」(運航衝撃および墜落安全性)を選定します。

衝撃試験は規格に従って実施しても、治具設計や計測条件のわずかな違いが結果のばらつきを生む試験です。
データ信頼性を確保するためには、規格遵守だけでなく現場での実務ノウハウが欠かせません。
本章では試験治具・センサー計測・判定基準・事前検討の4観点から、評価精度を高めるための実施ポイントを以下に沿って整理します。
試験治具の設計が結果を左右する理由
衝撃試験における治具設計は、データ再現性を左右する最重要要素の一つです。
試験機が規定どおりのパルスを発生させても、治具の剛性・質量・固有振動数が適切でなければ、供試体に伝わる衝撃波形は規格条件から大きく逸脱します。
治具の共振点が試験パルスの周波数成分と重なると、加速度の増幅や波形ひずみが発生し、評価結果の信頼性を損なう原因となります。
治具の固有振動数は試験パルスの主要周波数成分の2〜3倍以上を確保することが望ましく、基本的にFEMによる事前検証が必要です。
材質はアルミ合金が軽量・高剛性のバランスから多く採用されます。
加速度計の配置と校正の要点
加速度計は衝撃試験の入力波形と応答を直接捉える計測機器であり、その配置と校正がデータ品質を決定づけます。
衝撃試験では数千Hzから数万Hzまでの広帯域成分を扱うため、汎用的な振動計測とは異なる選定基準が必要です。
要点を以下に整理します。
| 項目 | 要求事項 |
| センサー種別 | 衝撃用ピエゾ電気式(共振周波数50kHz以上推奨) |
| 測定レンジ | 想定加速度の1.5〜2倍を確保 |
| 取付方法 | スタッドマウントまたは接着剤直接固定 |
| 配置位置 | 治具上の制御点と供試体応答点の2点以上 |
| 校正周期 | 年1回(メーカー校正)+使用前点検 |
両面テープやワックスでの仮止めは高周波成分の減衰を招くため衝撃計測には適しません。
制御点と応答点を分けて計測することで、不具合発生時の原因特定にも有効となります。
判定基準(機能喪失・物理的損傷)の社内標準化
衝撃試験の判定基準は規格に明示されない部分が多いため、社内標準として明文化することがデータばらつきを防ぐうえで必要です。
判定基準が試験ごとに変わると、合否判定が担当者の主観に左右され、再試験や不具合の見落としにつながります。
機能喪失と物理的損傷の2軸で判定基準を整理し、製品カテゴリごとに標準化しておく運用が実務上有効です。
機能喪失について「試験中の動作維持/試験後の動作復帰」を、物理的損傷について「外観上の許容変形量」「内部部品の許容クラック・剥離」を寸法・トルク値などの定量指標で規定し、試験計画書と試験報告書の共通フォーマットに組み込みます。
失敗を防ぐための事前検討項目
衝撃試験で発生するトラブルの多くは、試験実施前の検討不足が原因です。
設計レビュー(DR)の場で関係部門の合意形成を行う運用が望ましいアプローチで、具体的な事前検討項目を以下に整理します。
これらを試験計画書として文書化し、外注先と事前にレビューしておくことで、当日の認識齟齬や手戻りを大幅に減らせます。

衝撃試験を外注する際は、単に「試験機を保有しているか」だけでなく、自社製品の要求に応えられる総合力を見極める視点が欠かせません。
本章では信頼できる試験パートナーを選定するためのポイントを整理します。
具体的には、以下の3つの判断軸が重要となります。
一つずつ見ていきましょう。
落下・バンプ・爆発・機械衝撃に対応できる保有試験設備の確認
外注先選定の第一の判断軸は、自社製品が要求する衝撃試験のレンジに対応できる設備を保有しているかです。
試験種類ごとに必要な設備が異なり、すべての試験を一社で実施できる試験機関は限られています。
複数の機関に分散すると、治具・計測・判定基準の整合性確保が難しくなります。
機械衝撃試験機の加速度・パルス幅レンジ、落下衝撃試験機の対応質量・落下高さ、バンプ試験への対応、爆発衝撃(パイロショック)への対応、加振機の許容ペイロードを確認し、自社の試験条件で適合性を判断する運用が望ましいと言えます。
振動・温度などとの複合試験対応力
衝撃試験を単体で実施するだけでなく、振動・温度などとの複合試験に対応できるかは、外注先選定の重要な判断軸となります。
実機運用環境では衝撃・振動・温度が同時に作用するため、単一環境試験だけでは故障モードを網羅的に捉えられません。
振動試験から衝撃試験への連続実施、温度槽内での衝撃試験による熱応力との重畳評価、MIL-STD-810 Method 520(温度・湿度・振動・高度の複合)への対応などが必要となってきます。
複合試験は治具設計・計測系構築の難易度が大幅に上がるため、実績件数と技術ノウハウを保有する試験機関を選定することが重要です。
試験計画から評価・設計改善まで一気通貫で支援できる技術力
外注先選定の第三の判断軸は、試験実施だけでなく前後の工程まで一気通貫で支援できる技術力です。
衝撃試験は試験して結果を出すだけで完結するものではなく、適用規格の選定・治具設計・データ解析・不合格時の設計改善提案までを含めた総合的な技術支援があってはじめて、製品開発への価値貢献につながります。
試験計画段階での規格選定支援、治具設計とFEM解析による事前検証、SRS解析、不合格時の破面解析やFEM逆解析、設計改善への技術提案などを社内エンジニアが担当できる試験機関は、単なる試験代行業者ではなく開発パートナーとして機能します。
アレックス・ジャパンでは航空宇宙・防衛・重工業向けに、振動試験・衝撃試験から複合環境試験までを一気通貫で受託しています。
航空宇宙分野の厳格な品質基準(AS9100等)が求められる環境下での実務経験を持つエンジニアが、適用規格の選定から治具設計、試験実施、データ解析、設計改善提案まで、専任の技術窓口として一貫して伴走します。
「衝撃・振動試験に対応できる外部パートナーを探している」
「試験と解析が別事業者に分かれていて連携に課題がある」
「MIL-STD-810など航空宇宙・防衛分野の規格対応で困っている」
といった課題をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。

本記事では、衝撃試験と振動試験の違いから主要4種類、MIL規格の選び方、外注先選定のポイントまで体系的に整理してきました。
重要なポイントを以下に整理します。
・ 衝撃試験と振動試験の本質的な違いは、短時間・高加速度の瞬間破壊を見る衝撃試験と、長時間の共振疲労を見る振動試験という評価対象の差にある
・ 製品レベルの主要4種類は落下衝撃・バンプ・爆発衝撃・機械衝撃で、輸送から極限環境まで多様な衝撃を再現できる
・ 代表規格の選び方は、MIL-STD-810 Method 516とIEC 60068-2-27を納入先・搭載機種・適用要求の3軸で選定することが基本となる
・ データばらつきを防ぐ実施ポイントは、治具設計・加速度計の配置と校正・判定基準の社内標準化・事前検討項目の文書化の4点である
・ 外注先選定は「保有設備のレンジ・複合試験対応力・試験計画から設計改善まで一気通貫で支援できる技術力」の3軸で総合評価することが不可欠
航空機搭載電装品のように一つの試験結果が安全性と開発計画を左右する領域では、規格遵守と現場ノウハウの両輪が製品の信頼性に直結します。
試験から解析・設計改善までをワンストップで担えるパートナーを選定することは、開発スピードと品質を両立させる最短ルートとなります。
アレックス・ジャパンでは、振動試験・衝撃試験・複合環境試験を中核とした受託試験サービスを提供しています。
お客様の試験課題や規格要件に応じた最適なソリューションをご提案しますので、まずは下記よりお問い合わせください。
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