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CATEGORY: #試験・計測

投稿日:2026.07.27

疲労破壊とは?原因・メカニズム・S-N曲線から航空機の疲労寿命評価まで解説

設計時の強度計算を満たした部品が、運用中に突然破断する。

その多くは、繰り返し荷重による疲労破壊が原因です。

航空機の機体や翼、降着装置のように荷重を受け続ける構造では、静的強度だけで安全を判断できません。

本記事では、疲労破壊の原因とメカニズム、S-N曲線による寿命評価、設計・認証で試験・計装が求められる理由まで解説します。

疲労破壊とは|原因と3段階のメカニズム(亀裂発生→進展→最終破断)

疲労破壊とは、静的な強度を満たした部品でも、繰り返し荷重を受けるうちに進行する破壊のことを指します。

大きな荷重が一度加わって壊れる静的破壊とは異なり、目に見えない小さな亀裂が少しずつ進み、残った断面が荷重に耐えられなくなると、一気に破断します。

この章では、静的破壊との違いを起点に、破壊が進む3段階と、疲労破壊を起こしやすくする要因を以下のポイントに沿って順にたどります。

 

  • 疲労破壊とは(静的破壊との違い・繰り返し荷重で起きる理由)
  • 疲労破壊が進む3段階(亀裂発生→進展→最終破断)
  • 疲労破壊の主な原因(応力集中・表面粗さ・介在物)

 

疲労破壊とは(静的破壊との違い・繰り返し荷重で起きる理由)

疲労破壊とは、引張強さや降伏応力といった静的強度を下回る荷重でも、繰り返し受けるうちに破断へ至る破壊現象です。

静的破壊が1回の過大な荷重で一気に生じるのに対し、疲労破壊は静的強度以下の小さな応力が繰り返し加わることで、内部の微小な亀裂が少しずつ進展し、最終的に破断に至ります。

弾性変形の範囲内に見える応力でも、応力集中部では局所的な塑性変形が繰り返され、微小な亀裂が発生・進展する点が、疲労破壊の特徴です。

航空機の翼や車軸のように、低い応力を長期間・多数回受ける部材ほど、この蓄積を無視できません。

静的な強度計算だけでは安全を判断できないため、疲労を前提とした寿命評価が求められます。

 

疲労破壊が進む3段階(亀裂発生→進展→最終破断)

疲労破壊は、亀裂発生・亀裂進展・最終破断という3段階を経て進行します。

①亀裂発生

疲労破壊は、応力集中部や表面の傷、材料内部の介在物など、応力が集中しやすい箇所を起点として微小な亀裂が発生します。

② 亀裂進展

発生した亀裂は、繰り返し荷重を受けるたびに少しずつ進展します。

破面には、亀裂が成長した痕跡として、ビーチマークやストライエーションと呼ばれる縞模様が観察される場合があります。

③ 最終破断

亀裂が進展すると残存断面積が減少し、残存断面に作用する応力が増加します。

やがて残存断面が荷重を支えきれなくなると、短時間で最終破断に至ります。

 

疲労破壊は、最終破断に至るまで変形が小さく、外観上の前兆が現れにくい場合があります。

そのため、目視だけでは異常を発見しにくく、重大な事故につながるおそれがあるのです。

 

疲労破壊の主な原因(応力集中・表面粗さ・介在物)

疲労破壊は、応力集中・表面粗さ・介在物などを起点として発生することが多く、これらは疲労強度を低下させる主要な要因です。

要因 内容 疲労破壊への影響
応力集中 段付き・穴・溝・切欠きなど、断面形状が急激に変化する部位では応力が局所的に集中する。 微小な亀裂が発生しやすくなり、疲労強度が低下する。影響の大きさは疲労切欠き係数(Kf)で評価され、高強度材ほど切欠きの影響を受けやすい傾向がある。
表面粗さ 加工によって生じた表面の凹凸。 凹凸が応力集中を引き起こし、表面から疲労亀裂が発生しやすくなる。一般に、表面が粗いほど疲労強度は低下する。
介在物 材料内部に存在する非金属介在物や微小欠陥。 局所的な応力集中を招き、材料内部から疲労亀裂が発生する起点となる場合がある。

これらの要因は単独で作用するとは限らず、複数が重なって疲労強度を低下させる場合があります。

疲労破壊を防ぐには、形状設計・加工品質・材料品質を総合的に管理することが重要です。

S-N曲線と疲労限度|疲労寿命の評価方法をわかりやすく解説

疲労破壊への備えには、部材が「どの程度の応力を、何回まで耐えられるか」を定量的に把握する必要があります。

その基礎になるのが、応力振幅と繰り返し数の関係を示すS-N曲線と、疲労破壊が起こらない応力の限界を示す疲労限度です。

この章では、寿命を数値で見積もるための考え方と手法を、以下のポイントに沿って整理します。

  • S-N曲線の見方(応力振幅S×繰り返し数N)
  • 疲労限度と時間強度(鉄鋼は明確な限度あり/アルミ等非鉄は持たない)
  • 疲労寿命の評価方法(疲労試験・き裂進展試験・累積損傷・FEM)

 

S-N曲線の見方(応力振幅S×繰り返し数N)

S-N曲線は、一定の応力振幅を繰り返し加えたときの応力振幅(S)と破断までの繰り返し数(N)の関係を示すグラフです。

疲労寿命を評価する代表的な指標として利用されています。

 

項目 内容
縦軸(S) 応力振幅
横軸(N) 破断までの繰り返し数(通常は対数目盛)
曲線の特徴 応力振幅が小さいほど繰り返し数が増え、寿命が長くなる。応力振幅が大きいほど、少ない繰り返し数で破断する。

S-N曲線の見方

S-N曲線は、対象部材に生じる応力振幅と照らし合わせることで、疲労寿命のおおよその目安を把握する際に用いられます。実際の設計では、部材の疲労寿命を予測し、許容応力や安全率を検討するための基礎データとして活用されます。

 

疲労限度と時間強度(鉄鋼は明確な限度あり/アルミ等非鉄は持たない)

疲労限度とは、十分に多い繰り返し荷重を受けても疲労破壊が生じないと考えられる限界の応力のことです。

鉄鋼材料では疲労限度を持つ場合が多く、S-N曲線は10⁶〜10⁷回付近で水平に近づきます。

一方、アルミニウム合金や銅合金などの非鉄金属は、明確な疲労限度を持たない傾向があり、繰り返し数が増えてもS-N曲線は緩やかに低下し続けます。

そのため、非鉄金属では10⁷回など所定の繰り返し数における疲労強度を「時間強度」として評価するのが一般的です。

設計では、鉄鋼と非鉄金属で疲労特性が異なることを踏まえ、材料ごとに適切な設計をする必要があります。

 

疲労寿命の評価方法(疲労試験・き裂進展試験・累積損傷・FEM)

疲労寿命は、目的に応じて試験や解析を組み合わせて評価します。

主な評価方法は以下のとおりです。

方法 主な用途 特徴
疲労試験 材料特性の評価 S-N曲線を取得する
疲労き裂進展試験 き裂進展の評価 ΔKやパリス則を用いる
累積損傷則(マイナー則) 変動荷重下の寿命予測 損傷を累積して評価する
FEM 設計段階の応力解析 S-N曲線などと組み合わせて寿命を予測する

 

実際の疲労設計では、これらの手法を目的に応じて組み合わせ、材料特性の把握から寿命予測までを総合的に評価します。

疲労破壊の事故事例に学ぶ|航空機の設計思想はこう進化した

航空機の部品は、飛行のたびに与圧や空力によって生じる荷重を繰り返し受けます。

こうした繰り返し荷重に対する設計思想は、一度に確立したものではなく、過去の重大事故を教訓として段階的に発展してきました。

この章では、繰り返し荷重を受ける代表的な部位と実際の事故事例を踏まえながら、静強度設計から安全寿命設計、フェールセーフ設計、損傷許容設計へと発展した流れを、次のポイントに沿って解説します。

  • 繰り返し荷重を受け続ける航空機部品(機体・翼・降着装置)
  • 実際に起きた疲労破壊の事故事例(コメット連続事故・アロハ航空事故)
  • 事故を教訓に進化した設計思想(安全寿命→フェールセーフ→損傷許容)

 

繰り返し荷重を受け続ける航空機部品(機体・翼・降着装置)

航空機で疲労が問題になりやすいのは、飛行のたびに繰り返し荷重を受ける胴体・主翼・降着装置です。

胴体は、飛行中の与圧と降下・着陸時の減圧を毎フライト繰り返します。

この圧力変化によって、外板や窓開口部周辺には繰り返し応力が生じ、疲労亀裂の起点となる場合があります。

主翼には、飛行中に機体の重量を支える揚力が作用し、さらに突風(ガスト)や旋回などによって曲げ荷重が繰り返し加わります。

降着装置は、着陸時の衝撃や地上走行時の荷重を繰り返し受ける部位です。

Ni-Cr-Mo鋼などの高強度鋼が使用され、高い疲労強度が求められます。

いずれの部位も、1回ごとの荷重は設計許容範囲内であっても、飛行回数を重ねるにつれて疲労損傷が蓄積し、疲労破壊につながる可能性があります。

 

実際に起きた疲労破壊の事故事例(コメット連続事故・アロハ航空事故)

航空機の設計思想に大きな影響を与えた事故が2つあります。

 

コメット連続墜落事故(1954年)

世界初のジェット旅客機であるコメットは、地中海上空の巡航中に相次いで空中分解しました。

英国のRAE(王立航空研究所)が事故原因を究明するために行ったのが、機体を水槽に設置し、水圧を利用して与圧・減圧サイクルを繰り返す試験です。

その結果、窓開口部周辺に疲労亀裂が発生し、設計で想定したよりも少ない与圧サイクルで胴体が破壊されることが判明しました。

この事故を契機に、フェールセーフ設計をはじめとする疲労対策の考え方が発展しました。

 

アロハ航空243便事故(1988年)

高頻度運航によって与圧サイクルが蓄積した高経年機では、多数の微小な疲労亀裂が発生し、それらが飛行中に連結して外板が分離しました。

この事故を契機に、高経年機の点検強化や実機による全機疲労試験の充実が進み、損傷許容設計の重要性も一層認識されるようになりました。

 

事故を教訓に進化した設計思想(安全寿命→フェールセーフ→損傷許容)

事故の教訓を受け、航空機の構造設計思想は段階的に発展してきました。

まず採用されたのが安全寿命設計(セーフライフ)です。

これは部材が寿命内に疲労破壊しないよう設計し、寿命に達する前に交換する考え方です。

次に、コメット連続墜落事故を契機としてフェールセーフ設計の考え方が広く普及・発展しました。

一部の部材が破損しても、残りの構造で安全性を確保し、飛行を継続できるようにする設計思想です。

さらに1970年代以降は、フェールセーフ設計だけでは十分に対応できない事例も明らかとなり、損傷許容設計(ダメージトレランス)へと発展しました。

亀裂の存在を前提とし、定期検査で発見・補修するとともに、検査間隔内に亀裂が危険な大きさへ達しないことを解析によって確認する設計思想です。

現在の航空機構造では、損傷許容設計が基本的な考え方として広く採用されています。

航空機の疲労寿命評価を支える試験・計装と外注先の選び方

疲労寿命の評価は、解析だけで完結するものではありません。

設計・認証の最終段階では、実機や部材を用いた疲労試験や計測によって、解析結果や想定寿命を検証します。

一方で、疲労試験や計測には、専用の設備や計測機器、専門的な知見が求められるため、自社だけで対応することが難しい場合もあります。

本章では、試験による検証が必要となる理由と、外部委託を検討する際のポイントについて、次の内容に沿って解説します。

 

  • 認証を支える実機疲労試験と計装(なぜ解析だけでなく試験での裏づけが要るのか)
  • こんな課題を持つ企業へ(解析の妥当性を試験で確かめたい/試験と解析を一括で依頼したい)
  • 外注先の選び方とアレックス・ジャパンの強み(設計〜解析〜試験の一貫対応)

 

認証を支える実機疲労試験と計装(なぜ解析だけでなく試験での裏づけが要るのか)

航空機の型式証明では、試験用機体や代表部材を用いて、強度試験や疲労試験を実施します。

解析だけでは十分でない理由は、FEMなどの解析では材料特性のばらつきや製造誤差、実運用時の複雑な荷重条件、想定外の亀裂発生箇所までを完全には再現できないためです。

そこで、実機や部材に荷重を繰り返し加える疲労試験によって破壊に至るまでの挙動を確認するとともに、ひずみゲージなどの計装で実測値を取得し、解析結果の妥当性を検証します。

全機疲労試験では、実際の航空機と同じ構造の試験機に飛行時の荷重を繰り返し加え、疲労亀裂の発生や進展、疲労寿命を評価します。

こんな課題を持つ企業へ(解析の妥当性を試験で確かめたい/試験と解析を一括で依頼したい)

設計・解析を進める中で、次のような課題を抱える企業は少なくありません。

  • 解析(FEM)で求めた応力や寿命の妥当性を、実測で確かめたい
  • 試験と計装を別々に手配する手間をなくし、まとめて依頼したい
  • 航空宇宙・防衛で求められる品質水準に対応できる委託先を探している

これらの課題では、試験や計装による実測データを用いて解析結果の妥当性を確認することが重要です。

また、試験治具の設計から計装、疲労・強度試験までを一括で依頼できれば、工程間の調整や手戻りを減らし、開発を効率的に進められます。

 

外注先の選び方とアレックス・ジャパンの強み(設計〜解析〜試験の一貫対応)

外注先を選ぶ際は、次の点を確認することが重要です。

  • 試験治具の設計から計装、疲労・強度試験までを一貫して依頼できるか
  • 航空宇宙・防衛分野で求められる品質水準や実績を備えているか
  • 解析結果を実測で検証できる計装・計測体制が整っているか

アレックス・ジャパンは、CAE解析から受託試験・計装までを一貫して支援できる体制で、航空宇宙・防衛分野の部品開発に対応します。

品質マネジメントシステムの国際規格JIS Q 9100も取得済みです。

解析から試験・評価までまとめて相談したい場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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まとめ|疲労破壊を理解し、繰り返し荷重に耐える設計と寿命評価につなげる

本記事では、疲労破壊のメカニズムから、S-N曲線による寿命評価、航空機での事故事例と設計思想、試験・計装の外注先を選ぶ際の基準までを解説しました。

要点は以下のとおりです。

 

  • 疲労破壊は、静的強度を下回る繰り返し荷重によって、亀裂の発生・進展・最終破断を経て生じる。
  • S-N曲線は応力振幅と繰り返し数の関係を示し、鉄鋼材料は疲労限度を持つ傾向がある一方、アルミニウム合金などの非鉄金属は時間強度で評価する。
  • 疲労寿命は、疲労試験、疲労き裂進展試験、累積損傷則、FEMなどを目的に応じて組み合わせて評価する。
  • 航空機では、コメット連続墜落事故やアロハ航空243便事故を契機に、安全寿命設計、フェールセーフ設計、損傷許容設計へと設計思想が発展した。
  • 認証では、解析だけでなく、実機疲労試験や計装による実測データを用いて解析結果や疲労寿命の妥当性を確認する。

 

疲労破壊への対策では、材料や構造の特性を理解するだけでなく、寿命評価から試験・計装による検証までを一連のプロセスとして考えることが重要です。

アレックス・ジャパンでは、航空宇宙・防衛分野で培った技術を生かし、設計・解析から試験・計装までを一貫して支援しています。

疲労・強度試験や計装の委託先をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

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